「駅着いたけど、相変わらず混んでるね」
人混みが苦手なのか、一瞬顔をしかめた紫杏くんだったけれど。
瞬く間にいつも通りの表情に戻っていた。
…切符を買って、改札口を出て、電車が来る。
駅のホームとは違って、この車両に乗る人は少ないみたいで。
席に空きがあって、今日は座れそう。
…電車に入った途端、抜群に整った容姿の紫杏くんに視線が集中する。
中には、女の人の突き刺さるような視線が私に伝わってくる。
…やっぱり、紫杏くんってどこにいても目立つんだろうな。
学校の門の前でも、今も。
溢れ出る色気と整った容姿に魅了されない人はいない。
「ちょっと混んできちゃったね」
一つ目の駅を止まると、一気に人が流れ込んでくる。
この時間帯、電車を使って下校する中高生がとても多いんだよね…。
紫杏くん人混み苦手そうだったけれど、大丈夫かな?
「…花澄ちゃん、ちょっと肩貸してくれる?」
「うん?」
特に考えずコクリと頷くと、肩に寄りかかってくる紫杏くん。
肩貸してって…、そっか、普通に考えてそういう意味だもんね⁉︎
