突き刺さるような視線が次第に薄れ、黄色い悲鳴も遠ざかっていく。

その分繋がれた手に意識が向いてしまって…、すごく恥ずかしい。



「…紫杏くん」

「ん?」

「あの、手を離してもらってもーー」

「ダメ」



言い終える前に却下されて、繋がれた手に少し力がこもる。

ーー紫杏くんと手を繋ぐのは二回目。

とはいえ、あの時は恐怖一色で触れていることなんて微塵も考えてなくって…。

だから、今とは何もかもが違う。

…というよりか。

突然来て手を引かれるがままに歩いていくって…、どんな状況?



「紫杏くん、どこに行くの?」



道は駅に向かってるみたいだけれど…?



「どこって、花澄ちゃんの家」

「……」



私の、家…?



「何か私の家に用事でも…?」

「ないよ」




一言返事で、バッサリ。

じゃあ、どうして私の家に…?

そう思って紫杏くんをみると、赤い瞳をかすかに細めた。




「花澄ちゃんがあの場所を知った時から。
ーーもう俺から逃げられないんだよ」




妖しく笑う。

…危険な言葉。

逃げられない、だなんて恐ろしい言葉。

なのに。

紫杏くんからは逃げられない。

逃げないんじゃなくて、逃げられない。

不思議な引力がある。