間髪入れずに答えれば、ありがとう、と頬を緩ませる。

鼓動が少しだけ加速した。

…ていうか。

朝早くに押しかけて連れ出したのは俺なのに、ありがとうって。

変な子。

…もちろん、良い意味で。



しばらく歩いていたが、信号機待ちで止まる。

その途端、ソワソワし始める花澄ちゃん。



「紫杏君、今更だけど…色々とごめんなさい」

「…うん?」

「忠告してくれたのに、また来ちゃったりして…本当にごめんなさい。それから、」

「謝っても、許すことはできるけど他は何もできないよ?」



何か言いかけた花澄ちゃんの言葉を遮る。

この流れでいくと、“誰にも溜まり場のことは言いふらさないので監視はやめてください”って逃げるパターンだろうか。

よくあることだし、抵抗することは当たり前。

誰だって裏社会人と繋がりを持つことは嫌だろうし。

ーーでも。

今は逃がせない、逃がさない。