「でも、俺も裏側の人間だし。怖くないの?」
「んん…わかんない、けど…、紫杏くんすっごく悪い人ってわけじゃないもん」
「…ッ」
「だから、そこまで怖くないかな」
すっごく悪い人じゃないって…。
この子、警戒心解けるの早すぎないかな。
でも、そういうところがほんとに。
会って間もないのに、心を乱されている…気がする。
「もうそろそろ出口だからね」
「うん…」
まだ小刻みに震えてる花澄ちゃんの手を、軽く握りながらただただ歩き。
石垣に見せかけたドアを開ける。
誰も通ってないことを確認して、あの街から出ると。
「紫杏くん、送ってくれてありがとう」
「……?」
送ってくれてありがとう、だなんて。
連れて行ったのは俺だし、当たり前のことなのに。
「ええっと…、また今度…かな?」
「うん、また今度…っじゃなくて。
家まで送ってくよ」
「家まで…?」
ポカンとしながら繰り返す花澄ちゃん。
逆に俺が、少し驚く。
「家まで…いいの?」
「もちろん」
初めからそのつもりだったんだけどね?