俺の服の裾をギュッと握る花澄ちゃん。

握られた瞬間、心臓を少し鷲掴みにされたような気がした。

…腕とかじゃなくて、裾を引っ張るとか、控えめでいいな。

俺の好みのドストライクをついてくるんだよね、花澄ちゃんって。




「またお姫様抱っこしようか?」



少し震えて、青ざめてる花澄ちゃんに冗談っぽく声をかける。

…と、今度は少し頬をピンク色にしてフルフルと首を振った。



「…っそれは恥ずかしかったので…遠慮しとくね」



思い出したのか、顔をブワッと赤く染めた。

ものすっごくウブな表情に少し驚く。

…花澄ちゃんって、俺が思ってるより男への免疫無いのかな。

男と手を繋いだこともなさそうじゃない?

…この街を一人で歩かせたらすぐ食べられちゃいそう。



「それに、紫杏くんといれば、怖さが和らぐから…」

「……そう?ならいいんだけど」



心臓に悪ッ。

なんでこう、キュンとさせるようなことばっか言ってくるわけ。

無自覚って…怖いな。