「俺、中三。倉沢サンの一つ下だから」

「中三……」



私の、一つ下…?

同級生とかじゃなくて、年下…?

しばらく思考が停止してしまう。



「黒瀬、見た目は高校生だもん、驚いちゃうよね〜」



隣から、ムスク系の香りが微に鼻をくすぐる。

…いつの間にか現れた紫杏くんが、すぐ私の横に立っていた。



「中学生って、本当に…?」



中三…じゃない、見た目は完璧高校生なのに。

…と、視線だけこちらに向ける黒瀬くん。



「俺が嘘ついてどうすんの」



…その通り。

嘘じゃないってわかってるんだけれど、信じがたい。

…裏社会と言われる場所に、中学生がいるとは到底思えなかった。




「じゃあ、俺帰るわ」

「黒瀬にしては帰るの早くない?」

「…まあな。家でも勉強しないとなーって」




机の上に置いてあったいくつもの教材を、リュックに入れている。

中学三年生っていうと、受験生なのかぁ…。



「受験、落ちないようにね?」

「ご心配どーも」