その瞳に囚われて


「紫杏くん、ずるい…」





いつも翻弄するのは紫杏くんのほう。


ムッと唇を尖らせてみれば、笑う気配がした。




「花澄ちゃんのほうがずるいよ。
思わせぶりな態度ばっかりするくせに、肝心なことはあやふやで」



手を頬に添えたまま、私より不満げにつぶやいた紫杏くん。


思わせぶりだったのは、紫杏くんのほう。




「それは、紫杏くんもそうだったよ…」



言い返せば、困ったように、それでもって、とても優しく眉を下げた。



「それは…ごめん」




優しく慈しむように唇を重ねられる。

そのあと、また何度も何度も重ねられる。

言葉を紡ぐ暇なんてないくらいに。




「もう絶対離さないから」



その言葉は本気なようで。

愛おしそうに私を見た後、もう一度唇を落とした。


「花澄ちゃん。ーー愛してる」

「っ……私も、愛してる」



そう答えれば嬉しそうに満足げに笑った紫杏くん。

その瞳に囚われたあの日から。

もう逃げ出せないことを思い知るーー。






その瞳に囚われて ーENDー