人通りが少ない寂しい場所。
その一角にそびえ立った紫杏くんの家。
微かに震える手でインターホンを押す。
「はい。染野ですけどーー」
「紫杏くん、話があるの。出てきてください」
紫杏くんの声を遮る。
インターホン越しに、息を呑む気配がした。
通話が切れ、ガチャリとドアが開く。
「…どうしたの、花澄ちゃん」
優しい雰囲気など、そこに存在しなかった。
なんでここに来たのか、責め立てるような瞳で私を見てくる。
今伝えそびれたら、きっともう…チャンスはない。
「紫杏くんに、話があってきたの」
「……」
無機質に、ただ黙って聞く様子の紫杏くん。
息を吸って、吐く。
ソワソワして落ち着かない胸に手を当てて、どうにか保つ。