「紫杏くん…、待って」




ようやく声が出たのは紫杏くんの背中が見えなくなった後。

言葉は空に吸い込まれて消えていった。


伝えるって決めたのに。

もう後悔したくないって、思ったのに。

切り裂かれるように胸が痛い。


紫杏くんが去っていった方向を向く。

他人同士に戻ろうとも、好きだってちゃんと伝えたい。

芽生えてしまった感情は、消えないーー。