学校からの帰り道。
今日は、一人で帰る予定。
紫杏くんはこない。
だけれど、裏門を通ってしまうのは、きっと癖だ。
そして、今日は一つ、しなくてはいけないことがある。
紫杏くんに、気持ちを伝えること。
溜まり場の場所だって、紫杏くんの家だって知ってるのだから、行って伝えるだけだ。
深呼吸して、歩き出す。
私の家ではなく、紫杏くんのもとに向かって。
駅に乗って、一歩一歩確実に歩いて。
紫杏くんを思いながら、ひたすらに向かう。
「…っ、紫杏くん‼︎」
黒色の髪に、ムスクの香り。
そして、自然で綺麗な赤い瞳。
私が好きなひと。
「…花澄ちゃん」
伝えなくちゃ、いけないことがある。
でも、紫杏くんを前にすると上手く言葉が出なくなる。
鼓動が激しい。
言葉を、探す。
「俺、花澄ちゃんに伝え忘れてたことがあるんだけど、聞いてくれる?」