その日、紫杏は苛立っていた。
会いたいのに会いないなんて経験、幾度もしてきたはずなのに、慣れない。
頭にチラつく花澄ちゃんの姿。
振り払う気力もない。
外見は取り繕って平然としていても、心の内はぐちゃぐちゃだ。
すると、不意に扉が開く音がした。
「おお、三人揃ってるじゃねぇか」
その声に、苛立ちが増す。
厄介な人物、三人目。
死ぬほど最悪。
「紫杏元気ねぇな。なんかあったのか?」
「何もないよ。話しかけないでくれる?」
「え、怒ってる?こわ……」
黒瀬が口を挟む。
東郷は傍観役に徹した。
行く行きを見守っている。
「ああ、そういえば昨日、花澄が爽やか男と歩いてたんだけどよ。その前に男女二人いて、仲良さそうだったぜ」
大雅のその言葉にピクリと反応する。
爽やか男って、あの宮西クン?