こういうことがあった時、いつだって助けてくれるのは紫杏くんだった。
忘れるはずが、思い知るために来てしまったみたいで踏み潰されるように心が痛くなる。
一旦、心を落ち着かせる。
太ももに置かれた手を離し、出入り口に急いで向かう。
「倉沢…⁉︎」
ここで、私が一人抜けても気付かれないはず。
呆然としている健人くんを置いて、
そっと静かに扉に手をかけた。
そのまま、近くのトイレに逃げ込んだ。
「ふぅ………」
とりあえず一旦、息を吐く。
トイレの鏡に映る自分は、真っ青で、改めて怖かったことを実感する。
悪いけれど、帰ろうかな。
とてもいられる状況ではないし…。
ドリンクも何も頼んでいない状態だったから、支払わないで良いはず、だし…。
店内から出て、駅の方角へ向けて歩き出した。
その時。
「倉沢さん…?」
真正面から来た宮西くんと、ばっちり目が合う。
走っていたのか汗だくで、少し息を整えている。
