「ちょっと、ねぇ!私、柚朱(ゆず)呼んでって言ったよね?どうしていないの」
「いや、俺も一応誘ったんだぜ?でも、普通に断られたんだよ」
「はぁ〜、そこをどうにかして入れてよ!」
「無理だって。息を吐くように断られたんだよ!何回も」
柚朱というのは、宮西くんの名前。
宮西くん、誘われてたんだ。
しかも、女子からの指定で…、すごい。
トントン拍子で話しが進んでいく中、私はついていくこともできない。
どうやら、私以外の皆んな初対面ではないみたいで、少し気まずい。
…けれど、ここでボーッとしてはいられない。
まずは一歩前進しなくちゃ。
「倉沢…だよね?」
「えっと、はい…」
周りを見渡したところで、不意に名前を呼ばれる。
隣に、1人の男の人が座っていた。
「俺、健人(けんと)って言うんだけど知ってる?」
「…ごめんなさい、わからないです」
「そっか。初対面だもんな」
そう、この人と私は初対面なはず。
なんだけれど、どうして名前を知ってるんだろう?