「あなたが誰か知らないですけど、彼女を悪く言うのはやめてくれませんか。不愉快です」



気がつけば、ポスッと宮西くんの腕の中に収まっていた。



「誰、あなた。この子の彼氏?」

「だったら何ですか」

「この子に紫杏を近づけないで。紫杏にとって迷惑なの」



我慢していた涙が、溢れ出した。

宮西くんの服を濡らしていく。

すると、宮西君が私の耳を塞いだ。


二人はまだ何か話している様子だったけれど、女の人が去っていく気配がして顔を上げると。




「人通りが少ないとはいえ、嫌だったよね。ごめん」



バッと体が離れた後、珍しく怒っている様子の彼と目が合った。



「あの人、倉沢さんの知り合い?」

「違う…けど、知ってる人で…」



だんだんと俯いてしまう。


「……」

「紫杏くんの、彼女さんなの…」

「……は?」