綺麗な顔立ち。

色気があって、纏うオーラそのものが美。

紫杏くんと一緒にいた人、だ。




「私はあの社会の令嬢。紫杏とも釣り合いが取れてるし、付き合うのが妥当なの」

「……っ…」

「まさか、紫杏の立場を知らないなんて言わないでしょうね?」

「……」




すごい立場の人、なのかな。

紫杏くんもこの女の人も。

…聞いたらもっと遠い存在になってしまいそうなのに、知りたい。



「あの溜まり場のトップで、こちらの社会でも上位層なの。あなたみたいなただの監視対象とは全然釣り合わない。わかる?」



あの溜まり場のトップで、裏社会の上位層。

住む世界が異世界並みに違うし、すごく遠い存在なんだ…。



「大して可愛くもすごくもないくせに。役得のくせして、生意気」

「……っ、」




グッと込み上げてくるものを堪える。

…この、紫杏くんの彼女さんみたいに綺麗でもなければ令嬢でもなんでもない私。

現実は痛いほどに真実を物語っている。


一滴、何かが零れ落ちそうになった時、腕を優しく、でも強く引っ張られた。