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「打ち上げ、染野さんは来ないって聞いたけどなんかあった?」

「…うん…、少しだけ…」




最近は、宮西くんと帰るようになった私。

今日も一緒に帰ってると、心配そうな顔をした彼が私を捉えた。



「染野さんと帰らないのも、それが原因?」



頷けば、そっかと相槌を打つ。

微妙な空気感をどうにかして紛らわせないか考えるけど、私にはできなかった。



「俺でよければ、話聞きたいんだけど…どうかな?」



真っ直ぐとした表情。

本気で心配して、相談に乗ろうとしてくれる数少ない大切な人。


…どうしよう。


行き場のない思いを誰かに打ち明けたら、いっそ楽かもしれない。

けれど、話したら…、鮮明に記憶が蘇るのが怖い。



「…あれ、あなた、紫杏の監視対象の子?」

「……え?」



全くもって聞き慣れない女の人の声と、監視対象という言葉にピクリと反応してしまう。



「だれ、ですか…」

「愚問ね。私が誰かも知らないのに紫杏に思いを寄せてるなんて。身の程知らずな子」