というか、この前の熱の件で気づかれちゃったかな……。



「染野さんがいないの、珍しいね。どうかしたの?」



しばらく歩いたところで、そんな言葉が降りかかる。

何気ないことだけれど言葉にされるとずっしりとした重みが襲う。

自分から避けとはいえ、紫杏くんがいないのは…寂しかったりする。



「…ちょっと、色々あって…」




言葉を濁せばそれ以上は聞かないでくれた。


紫杏くんを真正面から避けたのは、初めだった。




「…倉沢さん。ちょっと寄り道しない?」



途切れかけた会話、微妙な雰囲気が流れる中、その場にそぐわない明るい声が澄み渡った。

普段の落ち着き払った彼からは少し離れた、明るい声。

一つ返事で頷けば、安心したように微笑んだ。