「水とゼリーとか買ってくるから。着替えてて」



椅子に腰掛けていた紫杏くんだけれど、立ち上がって出て行こうとする。

まだ、離れたくない。

それに喉も乾いてないしお腹も空いてないから大丈夫。



「水もゼリーも買わなくていいから、行かないで」

「…じゃあ、着替えてる間だけ外に出るから。終わったら呼んで」



そのままスタスタ立ち去ろうとしてしまう。

行かないでって言ってるのに。



「…やだ、ここで待ってて」

「……」

「あ、でも、着替えてるのはみちゃだめだよ…」

「………」




プツリと何かが切れたような音がした。

振り返った紫杏くんの表情は、危うい。

色気を滲み出した妖艶な雰囲気を纏って、瞳には熱がこもっている。



「俺、無防備なことはしちゃダメって言ったよね」



ベットまで近づいていき、私に覆い被さる。

熱を帯びた瞳が私を捉えて離さない。

頭の隣に着いた手を頬に添えた。

そのまま、近づいてくる紫杏くんの顔。

熱と紫杏くんのせいで体が火照る。

されるがまま、受け身の状態になっていると。



電話の着信音が響き渡った。

紫杏くんのだった。



「…それじゃあ、お大事に」



ハッと我に返ったように目を見開いて、
何事もなかったかのように部屋を出ていく紫杏くん。

次第に眠気が襲ってきて、プツリと意識が絶えた。