「…花澄ちゃん?」
「ふふっ、紫杏くん顔赤い」
稀すぎる顔色に思わずそう口にすれば、少し熱のこもった瞳で私を見据えた。
「ねぇ、花澄ちゃん。無防備すぎじゃないの」
「無防備じゃないよ」
「どこが。だいたい、男を部屋に連れてきちゃダメでしょ」
いつもの彼らしかぬ、声のトーンは低くて鋭い目をしている。
繋がれた手に、少し力が入った。
「怒ってる?」
「…怒ってる」
「どうしたら許してくれる…?」
怒ってる紫杏くんを見ることは滅多にないし、許してくれなかったらどうしよう…。
ゆらゆら揺れる瞳で、許して欲しいと懇願するように紫杏くんを見つめる。
「…今回だけ、許すから。もう無防備なことしちゃダメだよ」
子供に言い聞かせるように優しく伝える紫杏くんに、頷く。
すると、繋いでいた手が解けた。
「花澄ちゃん、制服から着替えてないよね」
自分の服装に目を向ければ、制服のまま寝転んでいたみたい。
…着替えなくちゃ。
