「今日は、溜まり場に紫杏くんいるの?」

「いない」




その返答を聞いて安心してしまう。

ここ数日、紫杏くんと会っても気まずい空気がずっと流れていて、顔を合わせづらかった。

気まずい、といっても、無意識のうちに私がよそよそしくなってしまいだけであって、紫杏くんはいつもと変わりないのだけれど。




「紫杏なしで溜まり場行くの初めてだから緊張するかもしれねぇけど、いつも通りで大丈夫だからな」



その言葉にハッとする。

…いつも溜まり場に行く時は、必ず紫杏くんがいたんだ。


電車に揺られ、歩くこと数十分。

溜まり場の喫茶店に着くと、東郷さんと黒瀬くんがいた。



「倉沢さん、お久しぶりですね。急に連れてきてしまってすみません」

「いえいえ!お久しぶりです…!」



丁寧な言葉遣い、柔らかい物腰。

とても裏社会の人とは思えない雰囲気な東郷さんが出迎えてくれる。