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ここ数日、紫杏くんのことを考えては嫌な思考に陥るのを繰り返して、中々眠れない夜が続いていた。


私がもっと綺麗で魅力的な女性だったら良かったのに。

…なんて、ないものねだりもいいところ。



「ごめんなさい…っ⁉︎」

「すみません…って、花澄?」




学校からの帰り道。

俯いて歩いていたからか、人とぶつかってしまう。

顔を上に向けると、知っている顔と声がした。



「大雅くん…!久しぶりだね」

「おお、久しぶりだな」




金髪にピアスをした男の人。

大雅くんがそこに立っていた。



「にしても花澄、ちょうどいいところに。
今から溜まり場に寄ってもらいんだけだいいか」

「溜まり場?また、急だね」

「ああ。ちょっと急ぎの用件があってな」




拒否権は、ないらしい。

私の手を握るなり、溜まり場へと向かっていってしまう。

紫杏くんにも有無を言わせない圧があるように、裏社会の人ってみんな強引なのかな。