ーーそれから駅まで、宮西くんと会話をしながら歩く。
紫杏くんはというと、一言も喋らず、ただこちらを見ているだけだった。
…宮西くんのおかげで、ここまで紫杏くんとは気まずい空気にならない…というか、空気すらも作られていなかったけれど。
電車に乗って、宮西くんが私の二つ前の最寄り駅で降りて、それからが問題だった。
電車内で、黙って私を見つめる紫杏くん。
…こちらを見る紫杏くんのその表情は読み取れない、無表情で。
少し怖かった。
アナウンスがかかって、下車すると、少し歩いたところでパシッと腕を掴まれた。
「花澄ちゃん。俺のこと避けてる?」
私の一歩後ろを歩く紫杏くんの声に、ドクっと心臓が音を打った。
「…気のせいじゃないかな。避けてないよ」
思ったより声は上ずっていて、怪しさ満点の答え。
嘘つくのは、どうも苦手みたい。
そんな私に追求することもせず、いつもの表情を浮かべる紫杏くん。
