その瞳に囚われて


紫杏くんにしては珍しい、険しい顔で宮西くんを見据えている。

それに応じるように、宮西くんも顔を厳しくして返す。

…とても、空気が悪い様子。



「…花澄ちゃんさ、なんで宮西クン連れてくるわけ。俺、宮西クン嫌いなんだけど」

「奇遇ですね。俺もあなたはどうも無理です」



ばちばちばち、と見えない火花が浮かぶ。

相性最悪…なのかな。

気まずい空気は消えるけれど、押し寄せる険悪なムード。

これは非常に、危険な空気間…。




「…まあいいや。君に構って花澄ちゃんとの時間が減るのは嫌だからね」



ピリピリした空気が消え去ったと思ったら、紫杏くんにギュッと手を繋がれる。

…しかも、恋人繋ぎで。

優しく繋がれたその手を、バッと振り払った。



「花澄ちゃん…?」



驚いている様子の紫杏くん。

他の女の人にもこういうことしてるのかなって思うと苦しくて、反射的に出た行動だった。