その瞳に囚われて




「倉沢さん。今日一緒に帰らない?」



ーー放課後。

帰る支度をしていると、宮西くんに声をかけられた。

いつもなら断るところだけれど。

ふと、ある一つの考えがよぎる。

宮西くんも一緒に、紫杏くんと三人で帰れば気まずい空気も吹き飛ばないかな。



「色々あって、紫杏くんもいるんだけど…大丈夫?」




その考えに頼ってみることにした。

宮西くんに聞けば、難しそうに頭を捻っている。



「…ごめんね、嫌かな…?」



顔見知り程度の相手と一緒に帰るのって、気を遣ってしまうし…、嫌なのかな。



「…嫌といえば嫌だけど。なおさら行かなきゃいけないな」

「……?」



嫌なのに行かなきゃいけないって、どうして…?

ポカーンとしてると、宮西くんが目を細めた。



「倉沢さんってビックリするくらい鈍感だよね」



静かに、独り言のようにそう零した宮西くん。

鈍感って、以前和葉ちゃんにも言われた気がする。