その瞳に囚われて


唐突に、今日の紫杏くんと女の人の姿がフラッシュバックしたのだ。

…拒否せずにはいられなかった。

失恋してるんだった、私は。


自分に精一杯だから、紫杏くんが傷ついた顔してるのに私は気づかなかったんだ。




「…絶対嫌、なんだ。そっか。
じゃあ、俺の肩に腕回せる?俺に寄りかかりながら歩こっか」



その言葉通り、紫杏くんの肩に腕を回して歩いていく。

倉庫から車に着くまで終始、無言だった。

なんとなく、気まずい空気が流れている。



「…紫杏くん、助けてくれてありがとう」



運転士さんの後ろの座席に、隣り合わせに座った私と紫杏くん。

沈黙を切り裂いたのは私のほう。



「…いいや。むしろ、巻き込んでごめん」

「巻き込んでなんかないよ!あれは、あの人の勝手な復讐心で…」



言葉を止める。

紫杏くんが、見たこともないくらい儚くて、美しい笑みを浮かべたから。