その瞳に囚われて



「俺はアイツの弱みを握って、復讐する。
…はずだったが」


突如、

首に、ひんやりとした何かが当たる。



「変更だ。お前が後10秒以内に吐かなかったら…殺す」

「……っ⁉︎」



それはつまり、10秒したら私が死ぬってこと…?

もちろん意地でも吐くつもりはない。

けれど、死ぬのは…怖いし、嫌だ。

会話が途切れたところで、全身が震え始める。

いつの間にか腕は男の人の手によって拘束されていて、身動きが取れない。

これじゃあ、死を待つばかりだ…。



「5、4、3……」




続くカウントダウン。

覚悟を決めて目を瞑った、その時だった。


銃弾の音と共にナイフが弾かれ、男の人が顔を苦痛に歪めて崩れ落ちる。

そして、近づいてくる足音。

現れた人物は男の人の前で止まった。



「花澄ちゃんに怖い思いさせるとか、ふざけんなよ」




普段の紫杏くんとは全く別物の、恐ろしく冷えた声にヒヤリとしてしまう。

同時に、紫杏くんが来てくれた安心感でポロポロ涙を溢してしまう。