その瞳に囚われて




「黙ってんじゃねぇよ、吐け!!」



凄みのある声に、ビクッと肩が跳ねた。

一呼吸置いて、気持ちを落ち着かせる。



「…無理です。言えません」

「あ"?」

「どうして、紫杏くんの過去を知りたがるんですが」




今にも殺しにかかりそうな形相をした男の人の目を見て、言葉を紡ぐ。

すると、ニタニタと、おかしそうに笑い出した。



「決まってるだろう、染野の一番の弱味はアイツ自身の過去だからだ」



一番の、弱味…?



「染野の過去に何かあったことは知っている。ただ、その中身を知らない。
…染野の弱味を知ることが、俺の目的だからだ」

「弱みを知るって、どうして……」

「どうしても何も、俺はアイツに恨みがあるからだ」



…恨みが、ある。

その言葉で、紫杏くんが裏社会の人だというのを再認識させられる。

男の目には、憎悪そのものが表れていた。