心の傷口が抉られるばかりだ。
視界に入るナイフに思わず涙を浮かべる。
私、殺される…?
「あー、泣いちゃって。怖いよなぁ。死にたくねぇよな」
首元寸前、どちらかが少しでも動けば首に当たる距離までナイフが近づく。
怖くて、もう声の出し方もわからない。
「でも大丈夫だ。殺しはしない。今から俺が言う質問に答えてくれれば、な」
「……」
少しの間、静かさが訪れる。
気味が悪い、恐ろしい沈黙。
「染野の秘密を吐け」
紫杏くんの、秘密…。
「お嬢さんなら知ってるだろ。
染野の過去の話だ。まだ裏社会に入る前の話だ」
「……」
確か、それは。
苦い苦い、紫杏くんの過去の思い出だ。
…きっと、紫杏くん自信知られたくない話で、彼の心の繊細な部分にある思い出。
それを、私が言えるわけがない。
