今度は、下の方に這う手。

目を白黒させる私を、余裕そうな瞳でみる紫杏くん。



「抵抗…って、どうするの…?」

「…は?」

「抵抗の仕方、わかんないよ…!」



これが、紫杏くん以外の人だったら無意識にでもできたかもしれない。

けれど、紫杏くん相手だとできないよ。



「…いつから抵抗できなくなったんだろうね、花澄ちゃんは」



ギュッと目を細めた紫杏くん。



「こういうのされたら本気で嫌がらなきゃいけないの。殴ってでも阻止しないと」




その瞳は、本気だ。

本気だけれども、その奥に潜む妖しさを纏った色も確かだった。



「……紫杏くんには、抵抗できないよ」



ボソッと、小さく。

自分にしか聞こえないボリュームで呟いたつもりだった。

ーーのに。

瞬間、危うい彼に豹変した。



「…俺だと抵抗できなくなっちゃうの?」

「……っ」

「それは絶対ダメ。俺が一番危ない自覚あるんだから」

「…や…ぁ……」



その言葉通り、危うく這う手が、太ももに降りる。

際どい部分を触るその手に、反応せずにはいられない。

ビクッと反応した途端、止まった手の動き。



「…やばいかも、これ」



小さく、私には聞こえないボリュームで呟いた後、手が離れた。

もう勉強どころじゃなかったのは、言うまでもない。