イケメン保健室・病弱少女の恋愛相談

 夏が近づく頃、私の拒食は悪化していた。

「半袖って腕が目立って嫌だな……」

 太く見える気がする。何度鏡で見ても写っているのはぽっちゃりとした私で、スカート丈も逆にみんなより長くしたかった。この太い脚を隠したい。
 体重計の数値は春よりも減って、このまま今日何も食べないでいたら明日には34kgも切るだろう。入院したときは30kgなかったからあと4kg減ったら私はあの頃の体型になるということ。でもあの頃はもっと痩せていた気がする。たったの4kgで、そこまで身体は変わるものだろうか? 幸いというか暑さで食欲はほとんどと言って良いほどなかった。何も食べない代わりにゼロカロリーのイオン飲料を飲んで、熱中症にならないようには気をつける。夏服の朝は目が眩みそうなほどまぶしかった。

「よう、今日も見学か」
「先生」

 プールの授業だったが、私は痩せすぎているから危ないと言う理由で授業は見学してレポート提出の日々だった。夏らしいことなんて何もしていない。白衣姿の先生は私を見て片眉をぴくりとあげる。

「大分痩せたな、大森」
「えっ……どこが」
「わからない? いま病院には通院しているのか」
「入院してしばらくは連れて行かれてたけれど、最近はもう両親もあきらめてる。私もわざわざ一人で行く気にはなれないし……みんな忙しいの、だから行ってない」

 その言葉に先生は少し悲しげな顔をして、私の頭をぽんと撫でた。

「大人の目が行き届かないのはお前が悪いんじゃないんだぞ」
「先生?」
「お前は俺が守ってやるよ」

 そう言って先生は大きな右手を私の頬に滑らせて、そのまま黙って去って行った。

「まも……る?」

 どういう意味で言ったのだろう。私って先生にとってはどういう意味があるの?
 先生、私のことどう思ってる?
 疑問はつきないまま、もうすぐ学校は夏休みになろうとしていた。