「ねぇまだ歩くの?疲れた」
かれこれ30分くらい歩いていた。しかも急斜面を。私の体力は限界になってきた。
「もう少しだよ。頑張って」
「優弥にとってもう少しでも私にとっては、少しじゃないんだよ」
拗ねながら言うと笑って返してきた。
「確かに。でも本当に少しだから。ちょっと遠く見てみなよ」
私は言われた通りに遠くを見た。
「わっ……!」
そこには、山に隠れかけながら綺麗に輝いている夕陽があった。
私はなんとか登ってもう一回ちゃんと見た。
「きれい…」
思わず呟いた。
その時私のここでの記憶がフラッシュバックしてきた。
「ん?あれ?ここって……」
「思い出した?」
夕陽に向けていた顔を優弥の方に向けて
「うん。なんとなく。あの時の場所だよね?」
「そうだ。あの時の」
あの時。それは私達にとって忘れてはならない大切な思い出。
なんで忘れてたんだろ。
「思い出してくれてよかった」
優弥は、ほっとした顔で言った。
「どうして今日ここに来たの?今日付き合い始めて節目の日じゃないのに」
「どうしてって…またここに来たかったからだよ…」
寂しそうに言った。
「どうしたの?なんかあった?」
顔を覗きながら言った。
「なんで?」
「なんか寂しそうな顔してたから。何かあったのかなって……あっ別に何もなかったらいいんだけど。ごめんね」
焦って言った私にフッと笑って
「何もしてねぇよ」
そう言って頭を撫でてきた。