「うっ……」
私は、眩しさに目を細めた。
周りはカーテンで仕切られている。
ちょっと漂う消毒の匂い。
(びょう…いん?なんで?)
めっちゃ泣いて、公園を出たところまでは覚えている。
でも、その後のことが思い出せない。
目だけ動かしてみると、点滴や機械が繋がっていた。
(なんだ?これ)
考えていると病室のドアが開いた。
ガタッ
(?)
物音がしたから見てみると水が入っているビニール袋を落としている優弥がいた。
「や…ほ〜。水…ちたよ」
声がガラガラだった。
優弥は目を見開いてズンズン近付いてきた。
「花蓮!大丈夫か?花蓮だよな!」
「…ん。どう……の?」
声が出なさすぎてほぼ会話が成り立たない。
「とりあえず、水飲む?」
声がガラガラな私に水を渡してきた。
「ん…ありが…う」
私は、受け取って水を飲んだ。
水のおかげで喉が若干回復した。
「で、どうして病院にいるの?」
優弥は呆気に取られた顔をした。
「まさか花蓮覚えてないのか?」
「うん」
一旦息をついてから
「花蓮。お前車に引かれたんだよ」
「…え?」
そして私の頭の中にその時の情景がフラッシュバックしてきた。
「あ…」
「思い出したか?」
コク
首を縦に振った。
「そうか」
優弥はほっとしたように息をついた。
「ご…めん…ね」
下を向きながら、頑張って声にした。
「何謝ってんだよ」
優弥は私の体に手を回して、抱きしめた。
優弥の心臓の音が聞こえる。
「なんで花蓮が俺を助けるんだよ。短い命の人間をどうして助けるんだよ」
「それは…優弥が死ぬのが嫌だから。優弥は私が今生きる意味であるから、死なせたくなかった」
「そっか。でも」

ー俺もう少しで死ぬから。これは変えられない 事実だから。

一気に涙が出てきた。
優弥にはまだそんなことを言って欲しくなかった。
「ごめんな」
優弥は優しく撫でた。
こんなに近くにある温もりもいつかは無くなる。それは知っていることだ。でも、まだ手離したくない。それなのに優弥は死を受け入れている。
「優弥は…死ぬのが怖くないの?」
「……怖いよ。本当は死にたくない」
そう言った声は震えていた。
「ねぇ。俺もっと生きていたいよ」
「優弥……」
その時、私を抱きしめていた腕に一気に力が入った。
「ぐっ……。優弥…痛い」
はぁはぁはぁはぁ
「優弥?」
優弥は辛そうに呼吸をしていた。