その日の授業はずっとそわそわしてた。
だから、ノートが白紙だったし、先生の話も右から左へ。
早く授業終われ!早く!早く!
4時間目の授業終了のチャイムがなると私のそわそわ度はマックスまでいった。
あとは優弥が来るだけ!
ドキドキとそわそわと本当に来るのかっていう不安がごちゃごちゃになっていた。
「花蓮〜ご飯一緒に食べよ〜」
愛が話しかけてきた。
「あ、愛。その今日はちょっと…」
「なに?なんかあるの?委員会?」
「いやそういう訳じゃないんだけど」
私が上手く断れなくておどおどしていると
「今日一緒に食べるんだよ」
優弥が私の肩に手を置いて言った。
「あれ?優弥じゃん。へぇ珍しいこともあるんだね」
愛がすっごいびっくりしてた。
私は思わず笑ってしまった。
優弥はちょっと怒って
「んだよ。悪いか」
「別に〜。ただ幸せそうで何よりです。と思っただけですよ〜」
「うっざ。とりあえずこいつ借りるぞ」
「どうぞお幸せに〜」
久々に見るそのやり取りに私はつい笑顔がこぼれた。
「じゃぁ行くぞ」
そう言って、私の手を握って教室から連れ出そうとしたから
「じゃぁ愛また後でね」
握られてない方の手で愛に手を振った。
「いってらっしゃい」
愛も手を振り返してくれた。
そして私達は教室を出た。
「どこで食べるの?」
手を引いてずんずん歩いていく優弥の背中越しに聞いた。
「穴場があるんだよ。ご飯食べるのにちょうどいい場所」
そう言ってどんどん歩いていく。
私はそんな優弥について行くのが精一杯だった。
「着いたぞ」
「わぁ」
つい声が出てしまうくらい綺麗な場所だった。
そこは、木々の間から陽の光が降り注ぐ。紫陽花や百合が光を反射して綺麗に咲いていた。
私達以外誰もいない。
「綺麗だね」
「だろ。いい場所だよな」
優弥はそう言ってほっとしたように笑った。
「お前にここを見せたかったんだよ」
「え?」
「お前花好きじゃん」
「そうだね。ありがと!私にこんな場所見せてくれて」
そう言うと優弥は一気に顔が赤くなった。
「優弥?」
私は大丈夫かなと思って優弥の顔を覗き込むと
「こっち見んな」
手で顔を隠しながら言ってきた。
「もしかして…照れてる?」
私は面白半分で言ってみた。
すると優弥の顔はさらに赤くなった。
「あぁ、もううるせぇな。お前が急にそんな顔しながらそんなこと言うからだろ」
「そんな顔?」
「すごいかわいい顔してありがとう言ったんだよ。破壊力やばすぎんだよ」
今度は私が赤くなる番だった。
「急に!何言うの?!」
「あはは。照れてやんの」
「むぅ」
私はほっぺを膨らませた。
「もう。そんな顔すんなって」
笑いながらほっぺをつんつんしてきた。
「えへへ」
「じゃぁご飯食べるか」
「うん」
ご飯食べている間、昨日結構話したのにも関わらずたくさん話した。
「なぁ、今日も一緒に帰らね?」
驚いた。まさか2日連続で一緒に帰れると思わなかったから。
「うん」
でも私は嬉しくてOKしてしまった。
「でも、いつもより少し早く来て欲しいな」
「うん。わかった。楽しみにしてて」
そう言って、私のほっぺにそっとキスをした。
「ちょっと!ここ学校だよ!」
「大丈夫。誰も見てないから」
ぎゅっと抱き締めてきた。
「優弥。苦しいよ〜」
逃げようとした私をさらに強く抱き締めてきた。
「もう少し待って。今花蓮パワーチャージ中だから」
「なんだそれ」
「ふぅ。チャージ完了」
そう言って私を離した。
「教室に戻ろっか」
「あぁ。そうだな」
歩き出そうとした私を優弥は引き止めた。
「花蓮」
「何?なんかし」
唇が塞がれた。
「っ!」
そして口の中に舌を入れられた。吸われた。
赤い跡が残るくらい。
「今日の花蓮も〜らい!」
そう言いながら、唇をふにふにしてきた。
その時予鈴がなった。
「戻るか」
「…うん」
私は優弥と手を繋いで教室まで戻った。
歩いている間ずっと頭の中が真っ白だった。
気付いたら教室の前に来ていた。
「じゃぁまた、放課後な」
「うん…」
私はさっきまでの余韻に浸りながら、呆然としながら返事をした。
そして午後の授業はずっとそわそわ、ドキドキしていた。
午前中同様先生の話は右から左へ。ノートは白紙のまま。
早く放課後が来ることをずっと願っていた。
いざ放課後。
あんなこと言ったけどどうせ早く来ないんだろうな。
そう思っていた。けど
「ほら行くぞ」
思ったより早く来た。
「マジで早く来た」
私はつい言ってしまった。
「お前。信じてなかったのかよ」
ジト目で見てきた。
「いや。そういう訳じゃないよ」
そう。ただ単に約束を守ってくれなかった優弥が守ってくれたことが意外だっただけ。
そんなこと優弥に言わないけど。
「じゃぁ行こっか」
終わってなかった準備を終わらせ、手を繋いで教室出た。
一緒にいて楽しかった。
この人を選んで、あの時断らなくて良かったと思っている。
今まで楽しくなかった毎日が今は楽しい。
でも、この楽しいは長くは続かないと知った。