「あー……っと、ありがとう」


そう言って受け取れば、篠崎がにやりと笑った。

まるで秘密を共有した時のような、悪戯めいた笑みだった。


いつもと違う表情の篠崎に、いつまでも見ていたい気持ちを慌てて振り切って視線を手に移す。


そこに乗せられたチョコレートは、普通に売られてるものと何も違いはないはずなのに、何故だか胸がきゅっとなった。



「食べねぇの？」


いつまでもチョコを見続ける私を不思議に思ったのか、横から声がかかる。



「あ……、食べるよ」


もう一度お礼を言ってから、取り出したチョコレートをぱくんと口に入れた。



その時の私を見る篠崎の視線とチョコレートの甘さが、いつまでも私に絡みついて離さないような、そんな錯覚を覚えた。


そしてそれが永遠に続けばいいと、じっとりとした甘さが舌に広がるのを感じながら、馬鹿なことを考えたのだった。