まさかそんなところに顔があるなんて思わず、今さら逸らすこともできない視線に、もぐもぐと動く篠崎の口とその手に握られたチョコレートのパッケージが目に飛び込んできた。



あ、チョコ食べてる。


そんなどうでもいいことを思った瞬間、はっと我にかえって自分の机へと目線を落とした。


「な」

少しだけトーンを落とした短い声。
でもはっきりと私を呼ぶその声に、胸がどきりとする。


「な、なに?」
「西宮もいるか?」

これ。
そう言って差し出してきたのは、多分今篠崎が食べてるであろうチョコレート。


あぁ、さっきそれを見てたと思われたのかな。


篠崎を見てたことに気づかれなかったことに、胸を撫で下ろす。

……いや、今回は本当に見るつもりなかったから。