「育児って美貴が想像するよりもずっと大変よ」

さすが、2人を同時に育てる母の言葉には実感がこもっている。

「覚悟しているわ」
「そう、ならいいけれど」

私にだって、泉美の言いたいことはわかっている。
勝手に妊娠して、相手に妊娠を告げることもせずに出産を決めるのはフェアじゃないとも思う。
おなかの子供から父親を奪うことも、無責任な行動だと理解している。
それでも、どんなことがあっても私はこの子と生きていくと決めたんだ。
だから、

「その時が来たら太郎さんには話すからもうしばらく黙っていてほしいの」
お願いしますと、私は泉美に頭を下げた。

泉美もそれ以上は何も言わなかった。