少しずつ丈夫になっていたとはいえ、体の弱い桃花が必死に母さんを支えた。
もちろん私も仕送りをして、生活の援助をした。
それでも田舎暮らしの不便さの中で若い女の子一人にできることには限界があって、困ったときには駿に頼っていたようだ。

そんな環境が2人の絆を強くしたのか、桃花が二十歳を迎えた年、
「お姉ちゃん、私結婚するわ」
突然の結婚宣言。
もちろん相手は駿。
その頃には母さんも元気になっていて、退職金で実家をリフォームして3人で暮らすんだと聞かされた。

苦労してきた桃花と母さんが幸せになるのは喜ばしいこと。
さすがに私だって「おめでとう」と言ったけれど、同時にこれで私の帰る家はなくなったんだとも感じた。

地元の友達は「幼馴染からの恋が実るなんて素敵じゃない」と褒めたけれど、私は複雑な思いで二人を祝福した。

どれだけ好きな男でも、心変わりすることはある。
唯一の家族だって、裏切ることはある。
だから、私は人を信じない。