極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません

「紅茶のお替りはいかが?」
すでに空になっている太郎さんのカップを見て勧めてみる。

「ありがとう。やっぱり温かい紅茶は気持ちが落ち着くね」
「そうね」

一口飲み込んでホッと息をつく瞬間が好きだから、私は夏でも暖かいものを飲むことにしている。

「そういえば、太郎さん何かあったの?」
確か疲れているって言っていたはず。

聞いてもいいのかなと不安になったけれど、やはり気になって尋ねてみた。

「あぁ、母が入院したらしくてね」
「お母さん?」
「うん。と言っても継母なんだけれど、精神的に弱いところがあって」

人は皆個性があって、強い部分も弱い部分も持っている。
その人の苦しみは本人にしかわからないわけで、誰も変わってあげることはできないけれど、

「心配ね」
「ああ。今はまだ父も元気だけれど、この先俺が家や病院を継ぐのは決まっているから何かあれば俺の肩にもかかってくる」
「大変ね」
「一人息子だし、その分贅沢させてもらっているから仕方がないとは思うんだけれどね」

私だって母が健在で地元に妹が残っているから好き勝手ができているけれど、ひとりっ子だったら自由気ままには生きられなかっただろう。
みんなそれぞれいろんなものを背負っているのよね。