「じゃあ、お休みは明日だけ?」
「うん」
たまたま店に来ていた泉美が、明日の結婚式だけ休んで翌日から店を開けると聞いて驚いている。

さすがに急なことで予約が取れないからと、平日に教会の予約をした私たち。
ごく親しい人達だけでささやかにって思っていたのに、桃花と駿とお母さんが東京へ出てくると言い出し、太朗のご両親や真理愛さんも上京。
あれよあれよという間に、参列者が増えていった。


「ねえ泉美、本当に大丈夫なの?」
ここしばらく何度も何度も言った言葉をまた投げかけてしまった。

「大丈夫、やれるようにやるから」
「ならいいけれど」

妊娠中の私はあと数ヶ月すれば産休に入る。
そうなればどれだけ頑張っても働くことはできない。
そのことについては私自身もすごく悩んで、いざとなればお店を閉めるしかないのかなとも考えた。
でもそんなとき、

「私が見ててあげるわよ」
まるで子守でもするかのように泉美が言った。

「本当にいいの?」
「うん、私もそろそろ外に出たいと思っていたし」
「でも」

泉美のところは双子だし、旦那さんも弁護士で忙しい人。
とても協力してもらえるとは思えない。

「そりゃあこの店の売上て食べていけるくらい稼げって言われれば自信がないけれど、幸い私もあんたもお金には困っていないでしょ?」
「うん、まあ」

太朗のマンションに住み、生活費までもらっている以上経済的には恵まれている。

「私は外に出たいのが一番の希望だし、つぶれない程度に見ておくわよ」
「うん」

無理なお願いをするからにはそれで十分。
バイトも増やせそうだし、泉美が週に何度か来てくれれば何とかなるでしょう。