それからしばらくはワンちゃんを膝に抱えたまま、太郎さんが用意してくれたおつまみでワインをいただいた。

「すごいですね」
冷蔵庫から次々に出てくる料理に驚いてしまう。

「妹が料理にはまっていてね、時々送って来るんだ」
「へー」

本当は彼女だったりしてと突っ込みたいのを何とか抑えた。
これだけのいい男なら女が放っておくはずはない。きっとモテるだろうな。

「こんなに懐いているのに、美貴さんの姿が見えなくなったら泣かれそうだね」

すっかり落ち着いてしまったワンちゃんの頭をなでながら、太郎さんがつぶやく。
これってもしかして、「泊って行けば」と誘われているんだろうか?
いつもこんな風に女の人を誘うんだろうか?
そんな事を考えながら、少し悲しい気持ちになった。

子供が欲しいなんて不純な動機で飲みに出ている私に言えた義理ではないけれど、太郎さんの遊んでいる姿はやはり想像したくない。

「明日はなるべく早く迎えに来ますね」
できるだけ明るく私は言った。