「私も、敬也のことがわかった時には叱られたんです」
「そう、よね」
黙ってっ出産なんて、かなり大胆だと思うもの。

「今になればわかるんです。子供のためにももっと早く話すべきだったなって。でもその時は自分のことしか考えられなかった」
当時を振り返り懐かしそうな顔をする真理愛さん。

なるほど、今の私は自分勝手なわがままを言っているのかもしれない。
親としての自覚が足りないのかな。

ガラガラ。
「こんにちわ」

玄関が開く音とともに、聞こえてきた声。
それは間違いなく太朗さんのもの。

「来たみたいですね」
「うん」

さあ、もう逃げられない。
どれだけかわいくないと言われても、どんな結果になっても、ちゃんと太朗さんと話さなくちゃ。

「大丈夫ですか?」
部屋を出る時にもう一度私の方を見た真理愛さんが、確認する。

「ええ」
私は精一杯の笑顔で答えた。