酔っ払いに絡まれている美貴さんを助け、彼女の部屋にお邪魔して、関係を持った。

なぜそうなったのか、それは正直自分でもわからない。
運命に導かれたとしか言いようがないのかもしれない。
美貴さんの事を知れば知るだけ惹かれていって、自分のものにしたいと思った。
もちろん、そのことに後悔はない。
ただ、頑なに『一夜の関係』として終わらせようとする美貴さんが気になった。
きっと彼女には大きなトラウマがあって、人を信じないでおこうとバリアを張っているのだ。

いくら連絡しても返事をよこさないのも、意地っ張りに思えて笑えた。
友達のために旦那さんに食って掛かる姿も、正義感にあふれていた。
送って行くって言うのに、「仕事がある」「約束がある」ってつく嘘が、かわいいとさえ感じた。
しかし、妊娠による悪阻に苦しんでいることには気が付かなかった。

「はあぁー、俺が父親か」
綺麗に片づけられた部屋のソファーに倒れ込んでつぶやく。

真理愛から『美貴さんともう少し話をしてみるわ』とメッセージが届いていた。
きっと今の彼女の気持ちが理解できるのは、同じような経験をした真理愛だけだろうと任せてみることにし、俺はおとなしく家で待つことにした。