パタン。
私は持っていた箸をテーブルに置いて、姿勢を正し桃花に向き直った。

「あんた、私に喧嘩売っているの?」

目の前の桃花はもう病弱でかわいそうな妹じゃない。
大人になって元気になった桃花に何も遠慮する必要はないし、そもそもここは私の家。誰にも文句を言われる筋合いはない。

「もしあんたが私と喧嘩したくてここに来たんなら帰ってくれる?こう見えてもあまり体調が良くないのよ」

妊娠中の情緒は不安定。
ただでさえイライラすることが多いのに、これ以上は無理。

「何で、私は本気よ」
「嘘つけ」

小さいころから甘え上手な桃花は欲しいものは全部手に入れてきた。
両親の愛情も、駿も、私から奪っていったじゃない。

「私もお姉ちゃんみたいに自由に生きたかったわ」
「桃花」

父さんが失踪して大変な時期に母さんを押し付けて桃花に苦労させたのはわかっている。
それを自由に生きてきたと言われれば、反論はできない。
でも、

「私だって、好き好んで地元を離れたんじゃない」
つぶやくように言ってしまった。