結局、桃花をマンションに泊めることになった。
私が気まずいように、桃花だって私といれば落ち着かないはず。
それでもわざわざ泊めてくれと言うからには何か事情がありそうで、断ることができなかった。


「すごいわねぇ」
冷蔵庫から出した作り置きの総菜を並べた夕食に、桃花が感嘆の声をあげている。

「全部貰い物だけれどね」
「ふーん」

この総菜はすべて太郎さんの家に届いたもの。
料理にはまっているっていう妹さんが毎週のように送ってくるのを私の家に運び込んだだけ。

「これ、美味しいわよ」
「うん、知っている」

妹さんの料理は何を食べても外れがない。
みんな美味しくてついつい食べ過ぎてしまう。

「これを作った人って、お姉ちゃんの彼氏のお母さん?」
「違うわよ」

太郎さんと駿は少し前に店で会っていて、その場で名刺交換までしてしまったから、きっと桃花の耳にも入っていると思う。
駿がどこまで話したかはわからないけれど、太郎さんの存在は伝えているはず。

「いいなあ、お姉ちゃんは」
「はああぁ?」

私は大きな声で叫び、桃花を睨みつけてしまった。