「毎日いらしてた高城先生がいらっしゃらないと、やっぱり寂しいですね」
出張でここ数日店に現れない太郎さんのことを思い出して、沙月ちゃんが口にした。

「そうね」

もちろん私だって、とても寂しい。
でも、慣れないといけない。
太郎さんはもうすぐ東京を離れるんだから。

「美貴さん、大丈夫ですか?」
「うん、まあね」

お医者さんなら出張だって珍しくはないだろう。
時間も不規則だし、予定が立たないことだって多いはず。
実際今回の出張も、本当に突然「教授の都合が急につかなくなって、代わりに明日から大阪に出張なんだ」と言われ驚いた。
けれど、きっとこれが太郎さんの日常なんだと思う。
まあどう見ても、私とは生活スタイルが違いすぎる。
だから私たちは、時々一緒に過ごすくらいがちょうどいいのよ。
もう少ししたら、それもできなくなるけれど。