「須見先生」
後ろから声をかけて来たのは、先輩の本城先生だった。
この人が笑顔で話しかけてくる時は、後輩である俺に仕事を押しつけてくる時だ。

「昨日オペした、橋川さんのフォローちゃんと出来てる?」
「あ、はい。村瀬先生に指示頂いて対応してますけど、何かありましたか?」
「いいや、出来てるならいいよ。じゃあついでにコレもよろしく」
「え、ちょっと!先輩」
カルテの入ったファイルを手渡すとスタスタと行ってしまった。
「午後にはERから来るって。得意でしょ、VSD。だから、ね。よろしく」
「マジかよ…」
またしても、仕事を押し付けられた。
「勝手に決めんなよ…」
そう言って俺が睨んでいた事を、本城先生はもちろん知らない。