「一花、」
帰り支度を終えて、ずいぶんと綺麗になった花壇の前を歩いていたときだった。
部活終わりらしき集団から離れた彼が、こちらに向かって歩いてくる。
「……え、……え?」
思わずきょろきょろと、あたりを見まわす。
まわりには、わたしの他に生徒はいない。
わたしの名前、……呼んだ?
彼がどんどん近づいてくる。
じめじめとした空気が、肌にピッタリとくっついてきて。体内の熱は外に出られずに、とどまったまま。
じわりじわりと、体温が上昇していくのがわかる。
「一花」
彼がわたしの名前を呼ぶと、いつも胸の奥のほうがビリビリと震えてしまう。
たいていの女の子たちを、彼は苗字で呼ぶから。
なんとなく、特別な感じがして嬉しい反面、ほかの女の子たちに疎まれているんじゃないかと心配になる。



