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「誰か、やりたいやつはいないか」

担任が教室内をぐるりと見渡す。
担任と視線を合わせないように。誰かは俯き、誰かは窓の外を眺めていた。

花壇の草取り作業を行うのに、美化委員の手伝いとして、各クラスから一名選出しなくてはいけないと言う。


「やりたいやつなんかいない、って」
「お願いします、って頭下げたら考えてあげてもいいけどさ」

ボソボソと。クスクスと。
滑り込んできた音が、耳の奥の方で膨張し始める。

時間が過ぎるにつれ、わたしの息苦しさが増していくのは確実で。


「……あ、……わたし、やります」

そろそろと手を挙げれば、あちこちから安堵の息が漏れる。

「さすが、神宮寺(じんぐうじ)!」
「助かったー」
「やっぱりね。一花ならやると思ったよ」

それらをゴクンと飲み込めば、不思議と息苦しさは消えてなくなる。