彼はみんなの『特別』だった。
忘れてたわけじゃない。
けど。
忘れたかった、って言ったら。
みんなは、どう思うかな。
「一花」
教室の入り口から、帰り支度をしていたわたしの名前を呼んだ彼が、「帰ろう」と続ければ、目をまん丸にしたクラスメイトたちが、わたしと彼を交互に見やる。
「なんで?」
「どうして?」
そんな言葉も聞こえてきて。
「……ぁ、」
ボッと、全身が熱くなる。
俯いた拍子にこぼれた髪が、赤く染まったであろう頬を隠してくれた。
「ちょっと、一花。どういうことっ?」
「……えっ、…と」
クラスで一番の美少女に問い詰められても、どう答えることが正解なのかわからなかった。
正直に話すことも、嘘をつくことも。
わたしにはできなかった。
「………ごめん、」
ただそれだけを残して、逃げるように教室を飛び出した。



