ついさっきまで緊張していたはずなのに。
わたしを見下ろす彼の表情は、いつの間にか元どおりになっていた。
それに比べて、わたしは。
「どうして、わたしなの?」なんて。訊きたくても訊けないくらい。
緊張して。
緊張しかなくて。
彼に気づかれないように、繰り返し酸素を補給していた。
ドキドキして。
クラクラして。
もちろん、フワフワもした。
「一緒に、帰らない?」
その言葉に、反射的に頷くと、二重で切れ長の目を細めた彼。
「明日は雨が降るらしい」とか。
「進路希望の紙を忘れて」とか。
わたしの歩幅に合わせて歩きながら、くだらないんだけど、って言いながらも、いろいろな話をしてくれた。
いつも、彼の半歩後ろを歩いていたわたしは。
「そうなんだ、」とか。
「ほんとに?」とか。
そんなことしか言えなかったけれど。
今日は、彼の隣を。
彼と肩を並べて歩いた。
七月七日。
今日は、短冊に書けずにいた願い事が叶った日。



